対話型鑑賞

▲ 渡り廊下に睡蓮が咲き続いていました

授業に出向いた小学校で

2016年から続いている小学生向け「コミュニケーション講座」、今年度最後の授業で訪問した本庄南小学校で、素晴らしい風景に出合いました。

それは上の写真、渡り廊下の窓に貼られた睡蓮、全校生徒449名で制作した作品です。
ガラス窓には半透明のカラフルな幅広ビニールテープが貼られ、水面を思わせています。天気やお日様の位置によっても全体の味わいが変わるのです。

これを仕掛けたのは、美術の先生だった岡村校長先生。印象派の巨匠クロード・モネの有名な絵「睡蓮」をイメージし、一人ひとりが花や葉を描き、好きなところに貼っていったそうです。狙いは「みんなちがって、みんなステキ!」

模写は自分の心に映ったモノ

その横に貼られていたのがこちらの写真ですが、少し分かりにくいですね。
これは6年生が描いた「ミレーの「種をまく人」と「落ち穂拾い」の模写です。山梨県立美術館での鑑賞授業の一環だそうです。

“模写”を、真似て、似せて描く(コピーする)のでは無く、その絵から自分が感じたものを、自分の解釈を上乗せして描き直すものとして捉えていると伺いました。
その結果、「種をまく人」から「発芽」「成長」「実り」をイメージして「明るい未来」の彩りで表現する子どもが居ると。素晴らしいですね!

アート鑑賞から主体的に学ぶ力を

この話を伺ったとき、ニューヨーク近代美術館で生まれた「対話型鑑賞」というプログラムを思い出しました。2020年3月14日のトピックスで取り上げていた〝教えない授業~美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方〟の実践版を見せて頂いたのです。

「対話型鑑賞」は、作品についての情報や解釈を先生や専門家と言われる人が伝えるのではなく、見た人の思いを引き出し、それを尊重して対話しながら作品を味わう方法です。

ここでの狙いは、「作品の鑑賞力を養う」ことを越えて、「学ぶ力」「学ぶ意欲」を養うことであり、正解のない問いに向き合う力や、異なる意見に耳うぃかたむける姿勢が子どもの中に芽生え育っていくことなのです。

今年度最後の学校で、素晴らしい作品を見せて頂きました。
来年度も、素晴らしい子どもたちと一緒に学べることを楽しみにします!