共感と共観

▲ 共感と共観

「キョウカン」を示す

国際コーチング連盟(ICF)が定めるコーチ能力を行動ベースでチェックする項目(PCCマーカー)の中に、

4.2: Coach shows support, empathy or concern for the client.
 (コーチはクライアントへのサポート、共感、関心を示している)

とあります(日本語訳はICF日本支部)。
“共感を示す”とは、具体的にどのような行動を示すことなのでしょうか。日常使用している「共感」には、相手の感情に自分の感情を同調させる “情動の共鳴” という意味があります。しかし「この共感」、コーチングにおいては「?」が飛びます。
コーチは、クライアントの思考や感情の渦に巻き込まれない、という原則があるからです。

共感と共観

心理学においては「情動的共感」と「認知的共感」に区別する捉え方があるそうです。
相手の感情に同調するのは情動的共感で、受け身で身体反応を伴う働き。それに対して認知的共感は、相手の心の状態を理解するという、能動的で理知的な働き、としています。

そして、「認知的共感には “共観” という漢字を当てると良い」との考えを見つけました。大賛成!です。
上記ICFのPCCマーカーの「empathy」は「共観」だと思います。

コーチングにおける共観

コーチとクライアントの信頼関係は、感情的・情緒的な関係の上に成り立たせるものではありません。コーチはクライアントの考え方や物事の捉え方、信念・価値観、思い込みなどの内面を探求し、クライアントが取っている行動を理解することで、クライアントの安心感を醸成します。この時、真に安心感を与えるために、コーチは自身が持つ考え方や価値観などを脇に置き、批判や評価を一切加えずに受け止め、受け入れる必要があります。
この受け入れは「共感」ではなく「共観」であり、これこそが信頼関係構築に求められる能力だと思います。

共観あっての共感であればまだしも、「分かる分かる」「なるほど、そうですよね」ましてや「同情します」という言葉を安易に使っても、信頼を得られることはありません。

ここで、私流に「共観」を定義すれば
「相手に現れている行動や情動を受け入れるために、その元を探求し、それが現れるプロセスを理解し認める働き」であり、端的に表現すれば以下になります。

共観とは、相手の必然をひも解き、理解する働き

コーチの共観力

クライアントの背景や内面を探求し、クライアントの能力を最大限に引き出すのが仕事であるコーチに必要なことは何か?

相手の内面に入るためには、コーチ自身が持つ価値観などの色眼鏡を自覚し、それを手放してニュートラルな状態になること、私は何も知らない、教えて欲しいという探究心で傾聴することが必要です。

難しいことです。先ずコーチ自身が内省すること、自分自身を知ることが始めであり、更に探求し続ける必要があります。
毎回のコーチングの場でも内省は求められます。今、コーチとしての自分は、何を感じ、何を考えながらクライアントの話を聴いているのだろうか?と。一生の学びだと思います。

前回2月3日の「直感と直観」に引き続き似たテーマを扱いました。
これは1月末に参加した(株)コーチ・エイ主催の勉強会を切っ掛けに私の中に起こった思考の整理整頓の一部を示しています。

梅が香っています

こちらの写真は、私の頭を整理する散歩道での一枚。
「香り」を感じる嗅覚情報は、喜怒哀楽を司る大脳辺縁系の海馬に直接送られるそうです。海馬は記憶を管理しているので、匂いを嗅いだ瞬間に人は「記憶」と「好き嫌いや喜怒哀楽の感情」が呼び起こされるのです。「梅の香」に対する「私の記憶」は、・・・「春近し」ですかね、梅の香は私の心と共感を起こすようです。

今回述べた「共観」は、決して、人間関係における「共感」を否定しているものではありません、全く。
両方共が必要な働き・作用を持っています。ここでは、コーチングの場、コーチングマインドの視点から述べました。